introduction
昨今は先行きが不透明で将来の予測が困難な状態が続いています。Web制作業界ではAIによる技術革新、働く世代の価値観の格差、リモートワーク化により組織求心力の低下などの課題もあります。それらに加えて、Web制作会社が担うべき業務は年を追うごとに増えており、クライアントからも高いクオリティーと作業レベルが求められ続けております。
またWeb制作会社には、利幅が減って体力が削られている状況下で、「他社との差別化を図って利益を出していくにはどうすればよいか」という課題が突きつけられています。昨今のWeb制作業界では、ホームページ制作自体がコモディティ化していることに加え、社員の労働時間は短縮化しているため、何も対策しなければ他社に大きく差をつけることはできません。エムハンドでは、困難の多い時代に一歩先を行くWeb制作会社として成長するために重視すべきは、予算配分であると考えています。
background
環境や労働市場が激しく変化する中で会社が存続していくには、コンスタントに利益を出す必要があります。そこで重要なカギとなるのが予算配分です。Web制作会社のビジネスモデルのほとんどは、この予算配分で成り立っているといっても過言ではありません。予算配分の方針が不明瞭であれば、さまざまな弊害が現れます。創業期の弊社には、予算配分をはじめ原価や工数、制作フローについての明確な基準がありませんでした。小さな案件では、見積りやスケジュールを当て推量で設定しても問題なく制作できていましたが、会社の成長に伴って大きな案件が増えてきたころ、いつまで経っても未完成の案件がちらほらと現れ始めました。フタを開けてみると、受注金額に対して制作時間がまったく見合っていない。かかった時間やコストを考えると本来は倍ぐらいの金額で請けるべき案件にもかかわらず、破格の低費用で受注していたということがありました。これは、予算配分の方針がなかったことから生じた弊害です。
当時学んだのは、「正当な対価を得るには、受注額と工数に対する基準を作るべきである」ということ。弊社ではこれをきっかけに、予算配分をビジネスモデルとみなして重視し、明確化を図るようになりました。今から15年以上前の話です。
弊社ではお客様から頂いた制作費用を下記の予算配分で制作に割り当てております。
予算配分
会社運営
20%
品質管理
5%
ディレクション
30%
デザイン
22.5%
コーディング
22.5%
経営視点での原価率
80%
=
品質管理 5%
ディレクション 30%
デザイン22.5%
コーディング 22.5%
ディレクター視点での原価率
50%
=
品質管理 5%
デザイン 22.5%
コーディング 22.5%
新規案件制作の場合、弊社ではお客様から頂いた制作費用を下記の予算配分で制作に割り当てております。予算配分の具体的な内訳を公開すると、弊社では「会社運営20%、品質管理5%、ディレクション30%、デザイン22.5%、コーディング22.5%」の割合で分配しています。基本的には、大型案件も小規模な案件もこの割合を基準としています。予算配分の内訳を決めることで、責任と権限を明確に意識できるようにしております。なお、この予算配分の割合は、案件に関わるメンバーには社内の案件管理システム(Work Manager)で見える化されております。
what we do
予算配分からは少し話がそれますが、弊社では以下の簡単な計算式を用いて、予算(制作費用)から制作にかけられる時間を割り出しています。110万円の案件では「1100,000 ÷ 5500=200(時間)」。ディレクターが、デザイナーやエンジニアに使える適正な工数は200時間です。また、デザイナーとエンジニアの時間配分を50/50に設定しているため、デザイナーに100時間、エンジニアに100時間が割り振られます。つまり、110万円の案件はこの時間を基準に制作しなければなりません。
費用面でのベクトルが合わせやすい
予算の使い方が“見える化”されていれば、クライアントも社員からも理解や納得を得やすくなります。また、ディレクター、デザイナー、エンジニアのそれぞれが、あらかじめ決められた予算のなかで高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。
人事評価基準の指標として役立つ
弊社では、以下の3つを「制作物の評価基準」として設けています。
- 1 -クライアントが喜んでいる
- 2 -プロとしての提案ができている
- 3 -適切な工数で納品できた
このうちの3つめについては、前述の工数を算出する計算式を使えば明快に評価できます。クリエイティブ面の評価が不明瞭になる理由のひとつに、「適正な時間の線引きが難しいこと」が挙げられますが、工数の判断基準があれば、時間内に制作できたかどうかを計ることができます。逆に評価基準が明確でなければ、クリエイターたちに対する評価は非常に曖昧なものになってしまうでしょう。
Structure 03